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  参考資料■

 

「言葉に関する問答集 総集編 ・文化庁」(平成8年11月8日 2刷)

 

(問)「温かい」と「暖かい」の使い分け

 

(答)「あたたかい」という語を漢字で書き表す場合に、「温かい」「暖かい」をどのように書き分けるかという問題である。この場合は、「温」という漢字は「冷」の類に属する意味を持っていて、「冷水・冷床」と同じく「温水・温床」と用いる。したがって、「冷たい」の類として、「温かいふろ」「温かい空気」「温かいスープ」「温かい料理」などと用いることになる。これに対して「暖」の方は、「寒」の類に属する意味を持っていて、「厳寒の候(一月)」と同じく「春暖の候(四月)」と用い、「寒暖の差」などと用いる。したがって、「寒い」の類として、「暖かい冬」「暖かい室内」「暖かい気候」「暖かい地方」などと用いることになる。

しかし、実際問題として、「冷たい」と感じるか、「寒い」と感じるかというのは、その感じ方にもよるわけである。寒中水泳で海に入ると、海の水を「冷たい」と感じ、海から上がると「寒い」と感じる。同じようにして、同じ空気の移動でも、夏の暑い日に冷房機のそばへ行くと、「冷たい風」に当たって気持ちがいいということにもなる。これに対して、冬の日に外へ出て気になるのは、「寒い風」が吹いているかどうかということである。そのような感じ方によれば、春は「暖かい風」が吹いて気持ちがいいということになる。こうして、同じく「風」でも、「温かい風」と「暖かい風」の両者が成り立つことにもなるが、基本的には感じ方が異なるわけである。

ところで、以上のような書き分けは、現行の「常用漢字表」の音訓欄に従った用い方であるが、実は昭和二十三年の「当用漢字音訓表」においては、多少事情が異なっていた。そのときは、「暖」の方にだけ「あたたかい」という字訓が掲げられていて、「温」の方には「あたたかい」という字訓が掲げられていなかった。そのため、新聞、雑誌などでは、「温」の意味の場合に、「暖」を用いたり、仮名書きにしたりすることが行われていた。しかし、昭和四十八年に改定された音訓表では、漢字の使い分けのできる異字同訓を積極的に取り入れたため、「温」にも「あたたかい」という字訓が追加され、それが、昭和五十六年の「常用漢字表」の音訓欄に受け継がれ、現在に及んでいる。したがって、現行の「常用漢字表」に従うならば、旧来の用い方に従って、「温かいふろ」「暖かい冬」のように書き分けるのが好ましいことになる。

 

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